ボトックス
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- STEP 1精密診断
- 院長による診察、噛み合わせチェック、そして必要に応じて睡眠筋電計検査を実施し、適応を判断します。
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- STEP 2治療計画の説明
- 期待される効果、持続期間、費用、リスク、そして治療後の注意点について詳しく説明します。
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- STEP 3施術
- 消毒後、極細の針を用いて、最適な部位と深さに薬剤を少量ずつ注射します。施術時間は約10〜15分で完了します。
ダウンタイムはほとんどありません。施術直後から日常生活に戻れます。
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- STEP 4効果の発現と持続期間
- 効果は通常、注射後数日〜2週間程度で徐々に現れ始めます。効果は⼀般的に4〜6ヶ月程度持続します。
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- STEP 5再治療
- 効果が薄れてきたら、定期的な再治療(年に2〜3回程度)を推奨します。
顎と歯の悲鳴を鎮める:睡眠時ブラキシズムとボトックス療法の役割
オーラルスリープ™は、睡眠中の異常な口腔習癖、特に睡眠時ブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり)によって引き起こされる深刻な問題に対し、多角的なアプローチを提供しています。
その治療選択肢の中で、従来のナイトガード(マウスピース)や噛み合わせ調整では改善が難しかった「極度の噛みしめ(クレンチング)」や、それに伴う慢性的な顎の痛み、頭痛に対して、ボトックス(ボツリヌス療法)が有効な治療法として注目されています。
ボトックス治療とは?〜歯科領域における作用の仕組み〜
ボトックスは、ボツリヌス菌が産生するタンパク質を精製した薬剤を、筋肉に注射する治療法です。
美容医療の分野で知られていますが、歯科医療や神経内科領域では、異常な筋緊張を緩和する目的で長年使用されてきた実績があります。
歯科におけるボトックス治療の主なターゲットは、顎を閉じる際に働く強力な筋肉である咬筋(こうきん)です。
ボトックスは、筋肉そのものを破壊するわけではなく、薬が作用している期間(通常4〜6ヶ月)だけ「筋肉を休ませる」ことで、歯ぎしりや噛みしめの習慣化されたサイクルを断ち切り、顎の過緊張状態をリセットします。
| 項目 | 歯科ボトックス療法の目的と作用 |
|---|---|
ターゲット |
咬筋(エラの辺りにある筋肉)および側頭筋(こめかみの辺りにある筋肉)。 |
作用機序 |
筋肉の動きを支配する神経伝達物質(アセチルコリン)の放出を一時的にブロックし、筋肉の異常な過緊張や過活動を緩和します。 |
治療効果 |
睡眠中の無意識の噛みしめ(クレンチング)の力と頻度を軽減し、歯や顎関節にかかる過大なストレスを劇的に緩和します。 |
審美的な効果 |
咬筋の発達(歯ぎしりによる筋肥大)によってエラが張って見える場合、筋肉が収縮することで輪郭をすっきりさせる効果も期待できます(小顔効果)。 |
「サイレントキラー」クレンチングへの切り札
特に音が出ないクレンチング(食いしばり)は、その力がすべて垂直方向に歯や顎関節に集中するため、歯のひび割れ、顎関節症、顎の筋肉痛の主要な原因となります。
ナイトガードは歯の保護には有効ですが、筋肉の異常な過緊張そのものを根本的に抑える効果には限界があります。
ボトックスは、このクレンチングによって過度に発達し、疲弊した筋肉を直接リラックスさせる、有効な治療選択肢となります。
診断の重要性:ボトックス治療は科学的な根拠が必要
高輪歯科では、安易にボトックス治療を推奨することはありません。
まずは科学的な診断によって、患者様の症状が本当に「筋肉の過緊張」によるものかを明確に特定することが最優先です。
睡眠筋電計(EMG)による客観的な診断
ボトックス治療の適応を判断するために、当院では睡眠筋電計検査を推奨しています。
力の測定
睡眠筋電計により、夜間に発生している噛みしめの力の強さ、頻度、持続時間を客観的に記録します。
適応の判断
噛みしめの力が極端に強い(異常な筋活動レベル)ことが確認され、かつナイトガードでも顎の痛みが改善しない場合に、ボトックス治療が最も効果的であると判断します。
この「力の見える化」は、患者様自身にも治療の必要性を理解していただくために不可欠です。
顎関節と咬合の診察
顎の痛みは、筋肉由来の痛み(筋筋膜性疼痛)と、関節由来の痛み(顎関節炎)があります。
ボトックスは筋肉に作用するため、痛みの原因が筋肉にあることを診断します。
噛み合わせや顎関節の状態を詳細に診察し、ボトックス治療後の顎関節への負担や噛み合わせの変化を最小限に抑えるための治療計画を立てます。
ボトックス療法の主な適応症と期待できる効果
ボトックス治療は、睡眠時ブラキシズムによる様々な症状に対し、劇的な改善効果をもたらす可能性があります。
重度の噛みしめ(クレンチング)
噛みしめの筋力そのものを抑制し、歯や顎にかかる過大な力を劇的に軽減します。
慢性的な顎関節・筋肉の痛み
噛みしめによる筋肉の過緊張状態が緩和され、顎関節周囲の痛みが解消されます。
起床時の頭痛
側頭筋の過緊張が原因の緊張型頭痛の頻度と強度が軽減します。
エラの張りの改善(審美性)
歯ぎしり・噛みしめによって発達した咬筋が収縮し、自然なフェイスラインに近づきます(小顔効果)。
ナイトガードの破損予防
ナイトガードを噛み破ってしまうほどの強い力がある場合、装置への負担を軽減し、寿命を延ばします。
特にこんな方におすすめです
ナイトガードを付けても、朝の顎の痛みが全く改善しない方。
顎の筋肉が発達しすぎて、エラが張っていることを気にされている方。
歯のひび割れや破折が頻繁に起こり、歯の寿命に危機感を持っている方。
慢性的な緊張型頭痛に悩まされている方。
治療の流れと安全性:高輪歯科の専門性
ボトックス治療は、顎の構造と筋肉の専門知識を持つ歯科医師が行うべき高度な治療です。
高輪歯科では、患者様の安全と効果を最優先に、細心の注意を払って治療を行います。
安全性と副作用
ボトックス治療は、適切な投与量と部位の選択が行われれば、安全性は非常に高いことが確立されています。
一般的な副作用
注射部位の軽い腫れ、内出血、鈍い痛みなどが起こることがありますが、数日で治まります。
稀な副作用
薬剤が隣接する筋肉にわずかに影響し、笑顔が一時的に不自然になる、噛む力が弱くなる(硬いものが噛みにくい)といった症状が稀に出ることがありますが、時間とともに解消します。
当院では、歯科麻酔や顎関節治療の経験が豊富な院⻑が、顔面解剖学に基づいた正確な位置に注射を行うため、リスクを最小限に抑えます。
ボトックス治療の真の価値:ナイトガードとの併用
ボトックス治療は、ナイトガード治療と組み合わせることによって効果を⾼めることができます。
1. 併用療法で得られる究極の保護
ボトックスの役割(力の軽減)
筋肉の過緊張を和らげ、ブラキシズムの力そのものを根本的に弱めます。
ナイトガードの役割(歯の保護)
弱まった力であっても、歯と歯が直接接触するのを防ぎ、歯の摩耗と衝撃から保護します。
「力を弱めるボトックス」と「衝撃を防ぐナイトガード」を併用することで、歯、顎関節、筋肉の三位一体の保護が実現し、歯の寿命を最も長く保つことができます。
2. 習慣化された「噛みしめサイクル」の遮断
長年続くブラキシズムは、脳と筋肉の間に「噛みしめる」という回路を形成しています。
ボトックス治療により筋肉が休むと、この異常な回路が一時的にリセットされます。
このリセット期間中に、ストレス管理やナイトガードの使用を徹底することで、「噛みしめない状態」を脳に再学習させ、長期的な症状の改善へとつなげることが期待できます。
