マウスピース療法
高輪歯科のオーラルスリープ™が提供するマウスピース療法は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)やいびきの改善を目的とした、非侵襲的(手術を伴わない)な歯科治療です。
マウスピース(スリープスプリントまたはOA:口腔内装置とも呼びます)は、個々の患者さんの歯型に合わせて作製した装置を睡眠中に装着し、気道の狭窄や閉塞を軽減し、いびきや無呼吸の発生を抑制します。
マウスピース(スリープスプリント)のしくみ
スリープスプリントは、気道を広くするために、下あごをやや前方に移動させた状態で固定するように設計されています。
この処置により、下あごに付着している舌の付け根の部分(舌根)が前方に引っ張られます。
結果として、睡眠中に重力などで狭くなりがちな咽頭部の気道が物理的に広がり、呼吸がスムーズに行えるようになるのです。
なぜ歯科医院で行うのか?
OSAの主な原因は、気道の狭窄、特に舌根沈下や下顎の骨格に関わることが多いため、顎の構造と噛み合わせの専門家である歯科医師による治療が非常に有効となります。
高輪歯科では、精密な気道分析CTの結果に基づき、最も効果的で負担の少ないマウスピースを設計・作製します。
マウスピース療法が特に適しているケース
マウスピース療法は、全ての方に適応されるわけではありませんが、特に以下のようなケースで高い有効性が期待されます。
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)
軽症から中等症の方(AHI:5以上30未満くらいを目安)。
気道狭窄の程度が比較的軽い段階では、CPAPと同等の効果が期待できます。
いびき
AHIが5未満であっても、いびき防止を目的として使用できます。
パートナーの睡眠を守り、生活の質(QOL)向上に役立ちます。
CPAP療法の継続が難しい方
CPAP療法が苦痛、マスクが顔に合わない、旅行や出張が多くCPAP装置の携帯が困難など、CPAPを続けられない方の代替治療として非常に有用です。
外科的治療を希望しない方
手術のリスクや負担を避けたい方にとって、非侵襲的なマウスピースは理想的な選択肢です。
重症のOSAの方
AHIが30以上(重症)の方でも、CPAP療法がどうしても受け入れられない場合に、代替手段として検討されます。
CPAP代替療法としての重要性
臨床研究によれば、閉塞性睡眠時無呼吸患者の20%がCPAPを使用しないことを選択し、CPAP使用者の50%が1年以内にCPAPの使用を中止しているとの報告もあります。
このような背景から、マウスピース療法は、CPAPの継続が困難な方にとって非常に重要なCPAP代替療法としての役割を果たしています。
以下のような方には、マウスピース療法をおすすめします。
CPAPを経験したが、継続使用が困難な方
出張先、旅行先、外泊先にCPAPを持って行くのが不便な方の併用
CPAPや耳鼻科領域の手術療法を避けたい方
マウスピース療法の優れている点:CPAPとの比較
マウスピース療法は、CPAP療法と比較して、患者様の利便性とQOL(生活の質)において多くの利点があります。
| 特徴 | マウスピース療法(スリープスプリント) | CPAP療法 |
|---|---|---|
装着の簡便さ |
非常に容易に着脱可能。口に装着するだけ。 |
マスクの装着、ホースの接続が必要。 |
携帯の容易さ |
極めて携帯が容易。小型ケースに入れて持ち運び可能で、旅行や出張にも便利。 |
装置本体、加湿器、マスク、ホースなどがあり、携帯が困難。 |
電源の要否 |
電源が不要。どこでも使用可能(キャンプ、災害時などにも)。 |
専用の電源が必要。 |
機械音 |
機械音がないため、ご自身も周囲も静かで快適。 |
作動音(モーター音)がわずかに発生する。 |
費用 |
長期間継続する場合と比較して、総費用を抑えられることが多い。 |
毎月のレンタル費用やメンテナンス費用が発生する。 |
スリープスプリントの種類と特徴:高輪歯科の選択基準
睡眠時無呼吸の治療に用いるスリープスプリントにはいくつかの種類があり、患者様の口腔内の状態や症状の程度に合わせて最適なものを選択します。
材質は、硬質の専用プラスチックで作製されるものや、弾性を持つ材料で作製されるものなどがあります。
スリープスプリントの分類
| 種類 | 特徴 | 利点 | 欠点 |
|---|---|---|---|
上下一体型 |
上下の歯列が一体化している。構造が単純。 |
構造が単純で破損しにくい。 |
調整が困難。あごが動かせないため、装着の違和感が大きい。 |
上下分離型 |
上下のパーツが独立しており、連結装置で連結されている。 |
下あごの移動量を細かく調整可能。装着感がよい。 |
作製コストが高い。歯ぎしりが強いとパーツが消耗する。 |
どのタイプが適しているかは、患者さんの口腔内の状態、症状の程度、顎関節の状態などを総合的に考慮して判断します。
一般的には、装着感が快適で、装着ストレスが少なく、調整が比較的容易な分離型が多く用いられる傾向にあります。
高輪歯科で扱う代表的なスリープスプリント:ソムノデント® AVANT
高輪歯科では、世界的に実績のある先進的なマウスピースを採用しています。
ソムノデント® AVANTは、軽症または中等症の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と診断された場合にCPAPと同等の効果が期待できる、世界的にユーザーの多いマウスピースです。
上下分離型で、下あごを動かすことができます。
装着して多少の会話や水を飲むこともできるため、ストレスが少ないのが特徴です。
CAD/CAMという方法で精密に製作されるため、装着感が良く、耐久性にも優れています。
また、3年間の保証が付いているので安心です。
スリープスプリント の費用と性能比較
マウスピース療法の適用における配慮と注意点
マウスピース療法は優れた治療法ですが、全ての方にすぐ導入できるわけではありません。
口腔内の状態によっては、事前の処置や工夫が必要です。
マウスピース療法に配慮が必要なケース
顎関節症の症状が顕著な方
顎関節治療を先に行い、顎関節に負担をかけないマウスピースを検討します。
歯周病や虫歯がある方
マウスピースの土台となる歯の健康が不可欠です。
歯周治療や虫歯治療後にマウスピースを作製します。
マウスピースの装着に必要な歯が少ない方
歯がない部分を補うための検討が必要です。
インプラントなどでマウスピースが安定して維持できるか検討します。
嘔吐反射が非常に強い方
違和感を軽減するために、特殊形状のマウスピースを作製するなど、装着の工夫を行います。
重度の鼻閉(鼻づまり)を有する方
口呼吸だけでは効果が限定されます。耳鼻科での治療やお薬の処方と連携し、呼吸しやすいマウスピースを作製します。
マウスピース療法の注意点
治療を開始するにあたり、以下の点にご理解いただく必要があります。
効果の個人差
人により効果のでかたに差があります。
特に重症例では効果が限定される場合があります。
顎や歯の痛み・違和感
開始時や顎の位置(顎位)調整後に、顎関節や歯、歯肉に痛みや圧迫感を感じる場合があります。
持続する場合は調整が必要です。
歯列や咬合への影響の可能性
長期間の使用によって、歯並びや噛み合わせにわずかな変化が生じる場合があります。
早期発見のため定期的なチェックは必須です。
唾液量の変化
装置を口腔内に入れるため、唾液が増加または減少することがあります。
定期的な調整と清掃が必須
効果を持続させ、口腔内の不具合を防ぐためにも、定期的な調整や洗浄が必要です。
